外注費支払明細書テンプレート|請求書との違い&書き方・注意点も解説

外注費支払明細書のテンプレートをお探しですか?

この記事では、ExcelやWord、Googleスプレッドシートですぐに使える無料テンプレートを複数ご紹介します。
さらに、支払明細書と請求書の違い、必須項目を押さえた正しい書き方、源泉徴収や消費税といった作成時の注意点も分かりやすく解説。

この記事を読めば、適切な外注費支払明細書をスムーズに作成・管理でき、外注先との円滑な取引や経理業務の効率化に繋がります。

外注費の支払明細書は、取引の透明性を高め、経理処理をスムーズにするために役立つ書類です。

ここでは、様々な形式で利用できる外注費支払明細書のテンプレートをご紹介します。

ご自身の業務スタイルや利用環境に合わせて、最適なテンプレートを選びましょう。

Excelで作成できるシンプルなテンプレート

Microsoft Excelは、多くの企業で標準的に導入されている表計算ソフトであり、外注費支払明細書の作成にも広く利用されています。

関数を用いた自動計算機能や、豊富なテンプレートが利用できる点が大きなメリットです。

シンプルなレイアウトのテンプレートは、カスタマイズも比較的容易です。

インターネット上には無料でダウンロードできるテンプレートも多数存在します。
ただし、手入力による計算ミスや入力漏れが発生しやすい点には注意が必要です。
また、ファイル共有の方法によっては、複数人での同時編集が難しい場合もあります。

以下に、Excelテンプレートの一般的な特徴をまとめます。

項目特徴
メリット普及率が高く、多くの人が使い慣れている。計算機能が利用できる。カスタマイズ性が高い。無料テンプレートが豊富。
デメリット手入力によるミスが発生しやすい。バージョン間の互換性に注意が必要な場合がある。ファイルベースでの管理・共有が基本となる。
入手方法Microsoft Office公式サイト、テンプレート配布サイトからのダウンロード、自作。
おすすめユーザーExcelの操作に慣れている方。オフライン環境で作業することが多い方。計算機能を利用したい方。

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Wordで作成できるテンプレート

Microsoft Wordは、文書作成ソフトとして広く普及しており、レイアウトの自由度が高い点が特徴です。

デザイン性の高い支払明細書を作成したい場合や、文章での補足説明を加えたい場合に適しています

Word形式のテンプレートも、インターネット上で無料配布されているものがあります。
ただし、Excelのような自動計算機能はないため、金額の計算は別途行う必要があります

表計算ソフトに比べて、複雑な計算やデータ集計には向きません。

以下に、Wordテンプレートの一般的な特徴をまとめます。

項目特徴
メリットレイアウトの自由度が高い。文書作成ソフトとして使い慣れている人が多い。デザイン性の高い書類が作成しやすい。
デメリット自動計算機能がない。表計算には不向き。Excelほどの普及率ではない可能性。
入手方法Microsoft Office公式サイト、テンプレート配布サイトからのダウンロード、自作。
おすすめユーザーWordの操作に慣れている方。デザインにこだわりたい方。計算は別途行う、または計算項目が少ない方。

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Googleスプレッドシートで使えるテンプレート

Googleスプレッドシートは、Googleアカウントがあれば無料で利用できるクラウドベースの表計算サービスです。インターネット環境があればどこからでもアクセスでき、複数人での同時編集や共有が容易な点が大きなメリットです。

Excelと互換性のある機能が多く、操作感も似ているため、Excelユーザーであれば比較的スムーズに利用開始できます。Googleが提供するテンプレートギャラリーや、他のユーザーが共有しているテンプレートを利用できます。ただし、オフライン環境での利用には制限があり、Excelと完全に同じ機能が使えるわけではない点に注意が必要です。また、高度なマクロ機能などはExcelに比べて制限される場合があります。

以下に、Googleスプレッドシートテンプレートの一般的な特徴をまとめます。

項目特徴
メリット無料で利用可能。クラウド上で管理・共有・共同編集が容易。Excelライクな操作性。自動保存機能。
デメリット基本的にインターネット接続が必要。Excelとの完全な互換性はない場合がある。高度な機能に制限がある場合がある。
入手方法Googleスプレッドシートのテンプレートギャラリー、テンプレート配布サイト、共有されたファイル、自作。
おすすめユーザーコストを抑えたい方。複数人でファイルを共有・編集したい方。場所を選ばずに作業したい方。

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近年、請求書や支払明細書などの帳票作成に特化したクラウドサービス(請求書作成ツール)が増えています。
これらのツールには、あらかじめデザインされた支払明細書のテンプレートが用意されており、入力項目に従って情報を入力するだけで、効率的に書類を作成できます

請求書データと連携して支払明細書を自動作成できる機能や、源泉徴収税額の自動計算、インボイス制度や電子帳簿保存法といった法改正への対応などが強みです。

代表的なツールとしては、「Misoca」「freee請求書」「マネーフォワード クラウド請求書」などがあります。
これらのツールを利用することで、入力ミスや計算ミスを減らし、経理業務全体の効率化につながります
ただし、多くの場合、月額利用料などのコストが発生します

以下に、請求書作成ツールの一般的な特徴をまとめます。

項目特徴
メリット入力・計算ミスを削減できる。請求書との連携が容易。法改正(インボイス制度、電子帳簿保存法など)に対応しやすい。テンプレートが豊富。発行・送付・管理が効率化される。
デメリット利用料がかかる場合が多い。ツールの操作に慣れが必要。サービスによっては機能に制限がある。
入手方法各請求書作成ツール(Misoca, freee請求書, マネーフォワード クラウド請求書など)に登録して利用。
おすすめユーザー請求書発行業務全体を効率化したい方。入力ミスや計算ミスを減らしたい方。法改正への対応をスムーズに行いたい方。毎月多くの支払明細書を発行する方。

これらのテンプレート形式の中から、ご自身の状況や目的に最も合ったものを選び、外注費の支払管理にお役立てください。

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外注費支払明細書とは?

外注費支払明細書は、企業や個人事業主が外部の業者やフリーランス(個人事業主)に業務を委託し、その対価(外注費)を支払う際に、支払金額の内訳や計算根拠を明確に示すために発行する書類です。

発注者が受注者に対して発行するもので、支払通知書の一種と考えることもできます。

この書類は、特に法律で発行が義務付けられているわけではありませんが、取引の透明性を高め、双方の認識齟齬を防ぐ上で重要な役割を果たします。

どのような業務に対して、いくら支払われるのか、源泉徴収税額はいくらか、消費税は含まれているのかといった詳細情報が記載されます。

外注費支払明細書の定義

外注費支払明細書は、発注者が受注者に対して、支払う外注費の具体的な計算根拠や内訳項目(作業内容、数量、単価、消費税、源泉徴収税額、差引支払額など)を通知する目的で作成・交付する文書と定義されます。

多くの場合、受注者から発行された請求書に基づいて支払処理が行われた後、その支払内容を確認する意味合いで発行されます。

特に、継続的な取引がある場合や、複数の案件をまとめて支払う場合、あるいは源泉徴収が必要な報酬を支払う場合には、この支払明細書があることで、受注者はどの業務に対する入金なのか、税金はいくら引かれているのかを正確に把握できます。

外注費支払明細書を作成するメリット

外注費支払明細書の発行は義務ではありませんが、作成・発行することで発注者・受注者双方に以下のようなメリットがあります。

対象者メリット詳細
発注者支払内容の透明化とトラブル防止支払金額の算出根拠が明確になるため、受注者との間で金額に関する認識のずれや問い合わせを減らし、トラブルを未然に防ぐことができます。
発注者経理処理の円滑化どの請求に対していつ、いくら支払ったかの記録が明確になり、社内の経理処理や支払管理がスムーズになります。
発注者下請法遵守の補完(該当する場合)下請法の対象となる取引では、親事業者は下請事業者に対し、給付の内容、下請代金の額、支払期日等を記載した書面(3条書面)を交付する義務があります。支払明細書は、支払額に関する事項を補完する役割も果たし得ます。
受注者入金内容の確認が容易複数の案件を請け負っている場合でも、どの業務に対する入金なのか、源泉徴収税額はいくらかなどを正確に把握できます。
受注者売上管理・確定申告の効率化受け取った支払明細書は、売上計上や入金確認の際の重要な資料となります。特に源泉徴収されている場合、確定申告時に支払調書の代わりとして利用できるケースもあります(ただし、原則として支払調書が必要です)。
双方信頼関係の構築支払に関する情報をオープンにすることで、相互の信頼関係が深まり、良好な取引関係を継続しやすくなります。

このように、外注費支払明細書は、円滑で健全な取引関係を維持するために非常に有効なツールと言えるでしょう。

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外注費支払明細書と請求書の違い

外注費の支払いに関連する書類として、「支払明細書」と「請求書」があります。
これらは記載される項目が似ている場合もあり混同されがちですが、発行する目的や発行者、役割が明確に異なります。スムーズな取引のためにも、両者の違いを正しく理解しておくことが重要です。

ここでは、請求書の役割、支払明細書の役割、そして両者をどのように使い分けるべきかについて詳しく解説します。

請求書の役割

請求書は、商品やサービスの提供を完了した受注者(外注先)が、発注者(依頼元)に対して代金の支払いを正式に求めるための書類です。

主な役割は以下の通りです。

  • 代金の請求:提供した業務内容とそれに対する対価(金額)を明示し、支払いを依頼します。
  • 取引内容の確認:いつ、どのようなサービスが提供され、その金額はいくらなのかを双方で確認するための根拠となります。
  • 支払い期限の通知:支払いをいつまでに行うべきかを明確に伝えます。
  • 取引の証憑:金銭のやり取りがあったことを証明する書類(証憑書類)の一つとして、会計処理や税務申告の際に必要となります。

請求書は、原則として受注者(お金を受け取る側)が発行し、発注者(お金を支払う側)へ送付します。

法的な発行義務はありませんが、日本の商習慣においては、代金回収のために不可欠な書類とされています。

また、2023年10月から開始されたインボイス制度においては、適格請求書(インボイス)が仕入税額控除を受けるための要件となっており、請求書の重要性はさらに増しています。

支払明細書の役割

支払明細書は、発注者(依頼元)が受注者(外注先)に対して、支払った(または支払う予定の)金額の内訳を通知・確認するための書類です。

主な役割は以下の通りです。

  • 支払内容の通知:どのような項目に対して、いくら支払った(支払う)のか、具体的な計算根拠(単価、数量、源泉徴収税額、振込手数料など)を示します。
  • 認識の齟齬防止:請求金額と実際の支払金額が異なる場合(源泉徴収や手数料の相殺など)に、その理由を明確にし、双方の認識のずれを防ぎます。
  • 支払い確認の円滑化:受注者は支払明細書を受け取ることで、入金された金額の詳細を容易に確認できます。

支払明細書は、原則として発注者(お金を支払う側)が発行し、受注者(お金を受け取る側)へ送付します。

請求書と同様に、法的な発行義務は原則ありません。
しかし、特に源泉徴収が発生する場合や、複数の案件をまとめて支払う場合などには、認識の齟齬を防ぐために発行されることが一般的です。

なお、下請法(下請代金支払遅延等防止法)の対象となる取引においては、発注者(親事業者)は受注者(下請事業者)に対し、給付の内容、下請代金の額、支払期日、支払方法などを記載した書面(注文書・発注請書など)を交付する義務があります。

支払明細書がこの書面の役割を兼ねる場合もあります。

また、インボイス制度においては、支払明細書も一定の要件を満たせば「仕入明細書」として適格請求書(インボイス)と同様の扱いができ、買い手側が発行した書類で仕入税額控除を受けることが可能です。
ただし、そのためには売り手側(受注者)の確認が必要となります。

両者を使い分けるポイント

請求書と支払明細書の主な違いをまとめると、以下のようになります。

項目請求書支払明細書
主な発行者受注者(外注先・お金を受け取る側)発注者(依頼元・お金を支払う側)
主な目的代金の支払いを求める支払った金額の内訳を通知・確認する
主な発行タイミング納品後・検収後など(支払い前)支払い時・支払い後
法的発行義務原則なし(商習慣上は必要)原則なし(下請法対象取引など例外あり)
インボイス制度適格請求書として仕入税額控除の要件となる一定要件を満たし、相手方の確認があれば仕入明細書としてインボイスの代わりになり得る

これらの違いを踏まえ、実務では以下のように使い分けられます。

  • 基本的な流れ:受注者が請求書を発行し、それに基づいて発注者が支払いを行い、必要に応じて発注者が支払明細書を発行して支払い内容を通知します。
  • 請求書のみの場合:請求書に記載された金額通りに支払われ、特に内訳の説明が不要な場合は、支払明細書が省略されることもあります。
  • 支払明細書が請求書代わりになる場合:継続的な取引などで、発注側が報酬計算を行い、支払明細書を発行して金額を通知し、受注者がそれを確認して請求書の発行を省略するケースもあります(この場合、インボイス制度下では注意が必要です)。
  • 源泉徴収がある場合:発注者は源泉徴収税額を差し引いて支払うため、支払金額と請求金額が異なります。この差額と計算根拠を明確にするために、支払明細書が発行されることが一般的です。

自社の取引形態や相手先との取り決めに合わせて、どちらの書類が必要か、あるいは両方必要なのかを判断し、適切に運用することが大切です。

外注費支払明細書の書き方

外注費支払明細書は、外注先への支払内容を明確にし、双方の認識齟齬を防ぐための重要な書類です。

正確かつ分かりやすく作成するために、基本的な書き方と記載すべき項目を理解しておきましょう。

ここでは、支払明細書作成の具体的な手順とポイントを解説します。

必須項目

外注費支払明細書には、取引内容を正確に伝えるために記載すべき必須項目があります。
これらの項目が漏れていると、後々のトラブルの原因となる可能性もあるため、注意深く確認しましょう。

一般的に必要とされる主な項目は以下の通りです。

項目名説明
発行者情報支払う側の氏名または会社名、住所、電話番号などを記載します。登録番号(インボイス発行事業者の場合)も記載することが望ましいです。
宛名支払いを受ける外注先の氏名または会社名を正確に記載します。「御中」や「様」などの敬称をつけます。
発行年月日この支払明細書を作成・発行した日付を記載します。
支払年月日実際に外注費を支払う(または支払った)日付を記載します。
管理番号(任意)支払明細書を管理するための番号です。必須ではありませんが、設定しておくと管理がしやすくなります。
支払内容(明細)どのような業務に対していくら支払うのか、具体的な内容を記載します。「作業内容」「品名」「数量」「単価」「金額」などを詳細に記載することで、透明性が高まります。
小計個別の支払内容(明細)の金額を合計した、税抜きの合計額を記載します。
消費税額適用される消費税率(10%または軽減税率8%)ごとに区分し、それぞれの消費税額を明記します。インボイス制度に対応する場合は、税率ごとの合計額(税抜または税込)と消費税額の両方を記載する必要があります。
源泉徴収税額支払う報酬が源泉徴収の対象となる場合に、その税額を記載します。(例:原稿料、デザイン料、講演料など)。個人の外注先への支払いで発生することが多いです。源泉徴収の対象かどうか、税率はいくらかは事前に確認が必要です。対象外の場合は「0円」または空欄、斜線などで構いません。
差引支払額(振込金額)報酬の合計額(税込)から源泉徴収税額や、場合によっては振込手数料などを差し引いた、実際に支払う最終的な金額を記載します。
振込先情報(任意)支払先の金融機関名、支店名、口座種別、口座番号、口座名義などを記載しておくと、双方にとって確認が容易になります。必須ではありませんが、記載しておくと親切です。
備考(任意)振込手数料の負担者(「貴社負担」「弊社負担」など)や、その他特記事項があれば記載します。

これらの項目を網羅することで、誰が、誰に、いつ、何の対価として、いくら支払うのかが明確になります。

記載例

ここでは、個人事業主のWebライターへ記事作成を依頼し、その報酬を支払うケースを想定した外注費支払明細書の記載例を示します。

【前提条件】

  • 支払先: 山田 太郎(個人事業主・Webライター)
  • 依頼内容: SEO記事作成 1本
  • 報酬(税抜): 50,000円
  • 消費税率: 10%
  • 源泉徴収: 対象(報酬額が100万円以下の場合、10.21%)
  • 支払日: 2023年12月25日
  • 発行日: 2023年12月20日
  • 振込手数料: 支払者負担

【支払明細書の記載例(明細部分)】

内容数量単価金額(税抜)備考
SEO記事作成(〇〇に関する記事)150,000円50,000円
小計50,000円
消費税(10%)5,000円
合計金額55,000円
源泉徴収税額▲ 5,105円※報酬額(税抜)50,000円 × 10.21%
差引支払額49,895円

【補足】

  • 源泉徴収税額の計算対象は、原則として消費税抜きの報酬本体です。ただし、請求書等で報酬本体と消費税額が明確に区分されていない場合は、消費税込みの金額を対象として計算することもあります。契約内容や請求書の記載方法を確認しましょう。
  • 振込手数料を外注先負担とする場合は、「差引支払額」からさらに振込手数料を差し引いた金額が最終的な振込金額となり、その旨を明細や備考欄に記載します。
  • 上記はあくまで一例です。実際の取引内容に合わせて、項目や記載内容を調整してください。

このように、必須項目を押さえ、具体的な数値を正確に記載することで、分かりやすく信頼性の高い外注費支払明細書を作成することができます。

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外注費支払明細書作成時の注意点

外注費支払明細書は、発注者と受注者間の取引内容と支払金額を明確にするための重要な書類です。

正確かつ適切に作成することで、後のトラブルを未然に防ぐことができます。

ここでは、外注費支払明細書を作成する際に特に注意すべき点を詳しく解説します。

金額の誤り

最も基本的かつ重要な注意点は、金額の記載ミスを防ぐことです。

支払金額、単価、数量、消費税額、源泉徴収税額など、すべての金額項目に誤りがないか、細心の注意を払って確認する必要があります。

具体的には、以下の点を確認しましょう。

  • 契約書や発注書と金額が一致しているか
  • 単価と数量から計算される小計は正しいか
  • 消費税の計算(税率、端数処理)は適切か
  • 源泉徴収税額の計算は正しいか(対象となる場合)
  • 各項目の合計金額、最終的な支払金額は正確か

複数人によるダブルチェックや、計算根拠となった資料との照合を行うことで、ケアレスミスを防ぐことができます。

金額の誤りは、信頼関係の損失や再発行の手間につながるため、発行前に必ず確認しましょう。

印紙の有無

外注費支払明細書が印紙税法上の「課税文書」に該当する場合、収入印紙の貼付が必要になります。

支払明細書が「売上代金に係る金銭の受取書(領収書)」としての性質を持つかどうかが判断基準となります。

具体的には、「外注費」として金銭を受け取った証明として発行する場合(つまり、受注者側が発行する領収書を兼ねる場合)は、課税文書(第17号文書)に該当する可能性があります。

印紙が必要なケース

支払明細書に「代済」「了」「領収しました」など、金銭の受領事実を示す文言が記載されている場合は、領収書と同様に扱われ、記載された受取金額に応じて収入印紙が必要となることがあります。

印紙が不要なケース

単に支払った金額の内訳を示す目的で発行され、受領事実を示す文言がない場合は、通常、収入印紙は不要です。
多くの企業が発行する支払明細書はこちらに該当します。

また、記載された受取金額(税抜)が5万円未満の場合は非課税となり、印紙は不要です。

印紙税額一覧(売上代金に係る金銭の受取書)

受取金額に応じて必要な印紙税額は以下の通りです。

記載された受取金額(税抜)印紙税額
5万円未満非課税
5万円以上 100万円以下200円
100万円超 200万円以下400円
200万円超 300万円以下600円
300万円超 500万円以下1,000円
500万円超 1,000万円以下2,000円
(以下、受取金額に応じて税額が増加)

印紙の貼付が必要な書類に貼付を怠ると、過怠税が課される場合があります。

支払明細書が領収書を兼ねるかどうかを慎重に判断し、必要に応じて印紙を貼付・消印してください。

消費税の扱い

消費税の記載は、インボイス制度(適格請求書等保存方式)の導入により、特に重要性が増しています。

支払明細書を仕入税額控除の適用を受けるための書類として扱う場合、インボイス制度の要件を満たす必要があります。

支払明細書をインボイス(適格請求書)として発行する場合、または受け取った支払明細書を仕入明細書として保存し仕入税額控除を受けるためには、以下の項目を記載する必要があります。

  • 書類作成者の氏名または名称
  • 取引年月日
  • 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  • 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)および適用税率
  • 税率ごとに区分した消費税額等
  • 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
  • 適格請求書発行事業者の登録番号(自社が発行する場合)
  • 相手方の確認を受けた旨(相手方が発行する場合で、仕入明細書として保存する場合)

通常の支払明細書であっても、税抜金額、消費税額、税込合計金額を明確に区分して記載することが、取引の透明性を高める上で望ましいです。

軽減税率対象品目が含まれる場合は、税率ごとに区分して記載する必要があります。

源泉徴収

外注先が個人の場合、支払う報酬・料金の内容によっては、所得税及び復興特別所得税の源泉徴収が必要になります。

支払明細書には、支払金額(税込)の他に、源泉徴収税額を明記する必要があります。

源泉徴収が必要な報酬・料金の例

以下のような報酬・料金を個人に支払う場合に源泉徴収が必要です。

  • 原稿料、挿絵の報酬、写真の報酬、デザイン料
  • 講演料、通訳料、翻訳料
  • 弁護士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、司法書士、行政書士など、特定の資格を持つ人へ支払う報酬・料金
  • プロ野球選手、プロサッカー選手、プロテニス選手、モデル、外交員などに支払う報酬・料金
  • 芸能人や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
  • コンパニオンやホステスなどに支払う報酬・料金
  • 契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払うもの
  • 広告宣伝のための賞金

法人に対して支払う場合は、原則として源泉徴収は不要です(ただし、馬主である法人に支払う競馬の賞金は例外)。

源泉徴収税額の計算方法

源泉徴収税額は、原則として支払金額(消費税込)に応じて以下の計算式で算出します。

同一人に対し1回に支払われる金額(支払金額から控除される消費税等の額を含む)計算方法(所得税及び復興特別所得税の合計税率)
100万円以下の場合支払金額 × 10.21%
100万円を超える場合(支払金額 – 100万円) × 20.42% + 102,100円

※司法書士、土地家屋調査士、海事代理士への報酬など、一部異なる計算方法が適用される場合があります。

支払明細書には、支払総額、源泉徴収税額、差引支払額をそれぞれ明記しましょう。

源泉徴収の対象となるか、税額計算が正しいか不明な場合は、税務署や税理士に確認することをおすすめします。

データで保存する場合の注意点

外注費支払明細書を電子データ(PDFなど)で発行したり、受領した電子データをそのまま保存したりする場合は、電子帳簿保存法の要件に従って保存する必要があります。

特に、電子取引(メール添付やクラウドサービス経由での授受など)で受け取った支払明細書は、原則として電子データのまま保存しなければなりません。紙に出力しての保存は、特定の条件下を除き認められなくなっています。

主な電子取引データの保存要件

  • 真実性の確保: 以下のいずれかの措置を行う必要があります。
    • タイムスタンプが付与されたデータを受領する
    • データの授受後、速やかにタイムスタンプを付与する
    • データの訂正・削除が記録されるシステム、または訂正・削除ができないシステムを利用する
    • 訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定め、それに沿った運用を行う
  • 可視性の確保:
    • 保存場所に、電子計算機(パソコン等)、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備え付け、画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと。
    • 電子計算機処理システムの概要書を備え付けること。
    • 検索機能を確保すること(原則として「取引年月日その他の日付」「取引金額」「取引先」の3項目で検索できること)。

電子帳簿保存法への対応は、システムの導入や社内規程の整備が必要となる場合があります。

国税庁のウェブサイトやパンフレットを確認したり、専門家(税理士など)に相談したりして、自社に必要な対応を確実に進めましょう。

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具体的な記入例(ケース別)

外注費支払明細書は、外注先や業務内容によって記載内容が異なります。

ここでは、特に外注依頼が多い職種を例に、具体的な記入例を解説します。源泉徴収や消費税の扱いについても触れていきますので、自社のケースに合わせて参考にしてください。

なお、支払金額や源泉徴収税額、消費税額は、発注者と受注者(外注先)の間で事前に取り決めた契約内容に基づいて正確に記載することが最も重要です。

不明な点があれば、必ず外注先に確認しましょう。

Webライターへの外注費支払明細書

Webライターへ記事執筆などを依頼した場合の支払明細書の例です。

報酬は文字単価や記事単価で計算されることが一般的です。

原稿料は所得税法で定められた源泉徴収の対象となる報酬・料金に該当します。

以下は、記事単価で依頼した場合の記入例です。

発行日2023年11月30日
支払先山田 花子 様
支払元株式会社〇〇
件名2023年11月分 Webコンテンツ作成業務委託料支払明細書
支払予定日2023年12月25日
No.内容数量単価金額(税抜)
1SEO記事「〇〇の選び方」執筆1記事50,000円50,000円
2ブログ記事「△△体験レポート」執筆1記事30,000円30,000円
小計80,000円
消費税(10%)8,000円
源泉徴収税額(10.21%)▲8,168円
合計支払金額79,832円

源泉徴収税額は、原則として報酬金額(税抜)に対して10.21%(報酬額が100万円を超える場合は、超える部分について20.42%)を乗じて計算します。
ただし、報酬に消費税が含まれている場合は、消費税込みの金額を基に計算することも可能です(請求書等で報酬本体の額と消費税額が明確に区分されている場合は、税抜きの報酬本体の額を対象として計算できます)。
上記の例では、税抜きの小計80,000円に対して計算しています(80,000円 × 10.21% = 8,168円)。

また、外注先がインボイス制度の適格請求書発行事業者である場合は、登録番号の記載も必要になることがあります。

支払明細書をインボイス(適格請求書)の要件を満たすように作成する場合は、税率ごとの消費税額や適用税率なども明記しましょう。

システムエンジニアへの外注費支払明細書

システムエンジニア(SE)やプログラマーへシステム開発や保守などを依頼した場合の支払明細書の例です。報酬は人月単価や時間単価で計算されることが多いです。

一般的に、システム開発やプログラミング業務そのものは、所得税法上の源泉徴収の対象となる報酬・料金には該当しないとされています。
ただし、契約内容にコンサルティング業務などが含まれる場合は、源泉徴収が必要となる可能性もあります。
契約内容をよく確認し、不明な場合は税務署や税理士に相談しましょう。

以下は、時間単価で依頼した場合の記入例です(源泉徴収なしのケース)。

発行日2023年11月30日
支払先株式会社テックソリューションズ 様
支払元株式会社△△
件名2023年11月分 システム開発業務委託料支払明細書
支払予定日2023年12月25日
No.内容数量(時間)単価金額(税抜)
1〇〇システム 機能追加開発80時間8,000円640,000円
2データベース保守作業20時間7,000円140,000円
小計780,000円
消費税(10%)78,000円
源泉徴収税額0円
合計支払金額858,000円

この例では、システム開発と保守作業の合計時間に対して単価を乗じて金額を算出しています。
源泉徴収の対象外であるため、源泉徴収税額は0円としています。

消費税については、外注先が課税事業者であれば請求されるため、適切に計上します。

インボイス制度への対応も確認が必要です。

デザイナーへの外注費支払明細書

Webデザイナーやグラフィックデザイナーへデザイン制作を依頼した場合の支払明細書の例です。

報酬はプロジェクト単位や制作物単位で設定されることが多いです。

デザインに関する報酬は、所得税法で定められた源泉徴収の対象となります。

Webデザイン、ロゴデザイン、イラスト作成、写真撮影なども含まれる場合があります。

以下は、プロジェクト単位で依頼した場合の記入例です。

発行日2023年11月30日
支払先デザインスタジオ クリエイト 様
支払元株式会社□□
件名2023年11月分 Webサイトデザイン制作料支払明細書
支払予定日2023年12月25日
No.内容数量単価金額(税抜)
1コーポレートサイト デザイン一式(トップページ、下層5ページ)1式300,000円300,000円
2ロゴデザイン作成1点50,000円50,000円
小計350,000円
消費税(10%)35,000円
源泉徴収税額(10.21%)▲35,735円
合計支払金額349,265円

この例では、デザイン一式とロゴデザイン作成の報酬合計(税抜350,000円)に対して源泉徴収税額を計算しています(350,000円 × 10.21% = 35,735円)。

Webライターの例と同様に、消費税の扱いやインボイス制度への対応について、事前に外注先と確認しておくことが重要です。

これらの記入例はあくまで一例です。

実際の業務内容や契約形態に合わせて、必要な項目を過不足なく記載するように心がけましょう。

特に、下請法の対象となる取引の場合は、支払明細書の交付義務や記載事項に関する規定があるため、より注意が必要です。

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よくある質問(FAQ)

外注費支払明細書に関して、多く寄せられる質問とその回答をまとめました。

外注費支払明細書は発行が義務付けられていますか?

外注費支払明細書の発行は、原則として法律で義務付けられているものではありません。
しかし、取引の透明性を高め、後々のトラブルを防ぐ観点から、発行することが推奨されます。

ただし、下請代金支払遅延等防止法(下請法)が適用される取引においては、親事業者は下請事業者に対して、発注内容、下請代金、支払期日などを記載した書面(支払明細書を含む場合がある)を交付する義務があります。
自社が下請法の適用を受ける親事業者に該当するかどうかを確認し、該当する場合は法令に従って適切に対応する必要があります。
義務がない場合でも、外注先との良好な関係を築くために、支払明細書を発行することは有効な手段と言えるでしょう。

外注費支払明細書の保管期間は?

外注費支払明細書は、発行側(支払側)・受領側(受取側)双方にとって、取引の証拠となる重要な書類です。
そのため、法律で定められた期間、適切に保管する必要があります。
保管期間は、法人か個人事業主かによって異なります。

区分 保管期間 起算日 根拠法
法人(発行側・受領側) 原則7年間
※繰越欠損金が生じた事業年度は10年間
その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日 法人税法
個人事業主(青色申告・発行側・受領側) 原則7年間 確定申告期限の翌日 所得税法
個人事業主(白色申告・発行側・受領側) 原則5年間 確定申告期限の翌日 所得税法

上記の期間は最低限の保管期間であり、社内規定などでより長い期間を設定することも可能です。
また、紙で受け取ったものだけでなく、電子データで受け取った支払明細書も同様に保管義務があります。

電子帳簿保存法について

外注費支払明細書を電子データ(PDFなど)で発行したり、受け取ったりする場合、電子帳簿保存法のルールに従って保存する必要があります。

特に、2024年1月1日以降は、電子データで受け取った取引情報(電子取引)は、原則として電子データのまま保存することが義務付けられています。
紙に印刷して保存することは認められませんので注意が必要です。

電子データで保存する際は、以下の要件を満たす必要があります。

  • 真実性の確保:タイムスタンプの付与、訂正削除履歴が残るシステム利用、または訂正削除に関する事務処理規程の備付けなど。
  • 可視性の確保:保存場所にパソコン・ディスプレイ・プリンターなどを備え付け、データを整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと。また、検索機能を確保すること(「取引年月日」「取引金額」「取引先」で検索できるなど)。

自社で発行した支払明細書の控えを電子データで保存する場合も、同様に電子帳簿保存法の要件を満たす必要があります。

会計ソフトや請求書発行システムの中には、電子帳簿保存法に対応した機能を持つものもありますので、活用を検討すると良いでしょう。

外注費支払明細書は、外注先との取引内容を明確にし、認識の齟齬を防ぐために重要な書類です。

請求書とは異なり、支払側が発行し、支払内容の詳細を示す役割があります。

本記事で紹介したExcelやGoogleスプレッドシートなどのテンプレートを活用すれば、効率的に作成できます。

作成時は、金額の正確性はもちろん、源泉徴収の計算や、2024年1月から電子取引データの電子保存が義務化された電子帳簿保存法への対応にも注意が必要です。

適切な支払明細書を作成・管理し、外注先との良好な関係を維持しましょう。

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